東京高等裁判所 昭和40年(ネ)2204号 判決
本件は、控訴人より被控訴人に対し富士吉田簡易裁判所に提起した所有権移転登記手続の訴(後記仮処分事件の本案訴訟)につき同簡易裁判所が言渡した判決に対し、被控訴人より甲府地方裁判所に控訴を申立て、同事件が同地方裁判所に繋属中、さきに同簡易裁判所の発した控訴人を債権者、被控訴人を債務者とする仮処分決定に対し被控訴人から同地方裁判所に取消の申立があり、同地方裁判所が右仮処分決定を取消す旨の原判決を言渡し、これに対し控訴人から当裁判所に控訴を申立てたものであること一件記録に徴し明白である。
然るに、民事訴訟法第七六二条但書において同法第四章の規定における本案の管轄裁判所を本案が控訴審に繋属するときに限り控訴裁判所としたのは、これを仮処分についていえば、仮処分に関する裁判の審級を本案の裁判の審級に伴わしめる趣旨と解するのが相当であるから、本案が控訴審係属中に控訴裁判所が本案の管轄裁判所としてなす仮処分に関する裁判は、仮処分の裁判としては初審であるときでも、第二審としてこれをなすものと解すべきである。このことは、控訴裁判所が新たになす仮処分を命ずる裁判および控訴裁判所の仮処分決定に対し異議または取消の申立があつた場合のこれに対する判決のみならず、本件のように、本案の第一審裁判所がした仮処分決定に対し、控訴審係属中に取消の申立がありこれに対し控訴裁判所がした判決についても、また、同様であるといわなければならない。控訴裁判所が地方裁判所であるときに限り、これを別異に解すべき理由はない(控訴人は右のように解すると民事訴訟法第四〇九条の二第二項にいう「仮差押又ハ仮処分ニ関シ高等裁判所ガ……第一審トシテ為シタル終局判決」なるものは現行法上存在せず無意味な規定となる旨主張するけれども、右規定は、他の法律において高等裁判所が第一審の管轄裁判所とされ、本案の管轄裁判所として仮差押又は仮処分に関する終局判決をなす場合のあることを予想して設けられたものであつて、現行法上も例えば、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二五条の規定による損害賠償の訴訟の第一審は東京高等裁判所の管轄に属するのであつて、これを本案とする仮差押に関する判決が右規定にいう「仮差押又ハ仮処分ニ関シ高等裁判所ガ……第一審トシテ為シタル終局判決」にあたること明かである。)。
然らば、原審甲府地方裁判所がした原判決は、判決としては初めてなされたのであるけれども、地方裁判所が第二審としてした終局判決であると解するほかなく、民事訴訟法第三六〇条第一項にいう「地方裁判所ガ第一審トシテ為シタル終局判決」に該当しないから、同法第四〇九条ノ二第二項により特別上告をもつて不服を申立てるは格別、これに対する控訴は許されないものといわざるを得ない。
(村上 吉田 柏原)